夢日記: 青衣の少年

少し前にこんな夢を見たように思う。少し前に、というか、何度か見たように思う。一帯に煙突のような塔が何本もたっている。私は(正確には私ではなく、私の視点を持つ私ではない誰か) その塔の外側に取り付けられたハシゴを登って、最上階の部屋にあがる。東洋のつくりらしく、壁は土で固められ、藁が飛び出している。部屋には四角い窓がひとつあるきりで、内装は質素だ。床にひとつ、丸いゴザが置かれている……。私は求めているものがなかったとわかり、その塔を下りる、次の塔へ。私は何を探しているのかわからないが、何かを探している。それを何度か繰り返すと、目当ての部屋に行き当たった。少年がいる。青い粗い目の布を袈裟がけに着ている。幼い少年だ。十歳くらいの。頭は剃っている。何かの儀式だ。宗教儀式。だが、なんの……? よくわからない。それからその少年と何かを交わしたような気がするが、うまく思い出せない。その少年を連れて地面に降り立ったような気もする。覚えていない。

今日見た夢は全く違って、何かに追われている夢だった。何か、といっても人間ではない。空間。空間が迷路になって、その迷路もあるところがふさがったり、道ができたりする。生きている空間だ。妹と何かを話している。黒いレザーを着た男が何かをしゃべっている。いろいろな場所に出て、通り過ぎた。最後にその坊主の少年と出会った。何かを話しかけた。こたえながら彼はつかんでいた蛙にむしゃぶりついた。その瞬間、びくびく痙攣する筋肉が、ぬめりを帯びた蛙の皮が口の中の粘膜に張りつく感触がリアルに私に迫りかかって、飛び起きた。

蛙。蛙はなじみが深い。それこそ何十匹となく私は蛙の腹を割き、肉を抉り、屠った。科学のために。寒い午後は蛙の内臓に手を突っ込んで冷えた手をあたためた。そのあいだも麻酔のかかった蛙の心臓は動いていたな……。あれから私は何を学んだというのか。うまくなったのは内臓を傷つけずに皮だけを薄く切る技術くらいで、何も学んでない。