医学部を目指す人たちへ

こういうのを書くのは最後だと思う。でもだからこそ私は今書いておきたい。生暖かくなってしまったけど、私はほんとうは妹や弟にこういうことを言いたかったんだと思うんだ。

医学部を一言で表すと⇒激・体育会系。勉強はできて当たり前。人格なり体力なり成績以上のものを求められるのが医学部。そもそもガチマイナーな単科大の医学部でも東大入学レベルの成績を要求されるのが現状。二浪、三浪生もごろごろいる。私学でさえ、それほど安易に入れるところはまずないと思っていいと思う。

授業については、医学部は最終的に医師免許を取得するのが最大にして唯一のゴール地点なので、言ってみれば予備校に通うようなものか? つまりどこも大して授業内容に差はない。なので、住みたい地区や総合大か否かなどを自分の成績と考慮しつつ決めていけばいいと思う。偏差値が違うから授業や先生が取り立ててスバラシイってのはない。

それほど厳しい受験競争をクリアして入学しても、ドロップアウトする人間は大勢いる。留年生も非常に多い。私は特に生物を全く学ばなかったので、(物理と化学、数学のみのゴリ押しで、ただこの三教科に関してはどこ受けてもほぼ満点だった)受験勉強しているほうが楽だった。基礎医学がくそみたいにつまらなく、臨床に入った段階でわかったこと⇒生理や生化って必要ないじゃん。もうだめだめ。人を救いたいという高尚な信念のもとで医学部を目指す人間も多いと思うが、人どころか細胞と向かい合うしかない最初の二、三年は冗談でなく地獄にいるようなものです。私はいつも呪うように最初に臨床を持ってくればいいのにと思っていた。また、実習が始まると帰宅が翌日になることも珍しくなく、体力勝負。グループで一つのことに取り組まなければいけないことも多いので、いわゆる引きオタ・受験マニアは完全にこの方面に向いていない。あとで死ぬほど苦しむことになるので諦めろ。

体育会系と言ったが、実際、オタクは少なく、ゲームなりPCなりをやっていても、趣味の一つで収めている人間が多い。勉強量が半端でないことも一因か。だが、遊びまくっていながら一個も落とさないモンスターもいっぱいいるのがここの恐ろしさなんだよね……。何百ページもある教科書を何十冊も読まされ、しかも日本語訳が出ていないので英語ということも多々あり、もちろん論文は全て英文ですから、えーと、医学部に入ればどんなアホでも英語の読み書きくらい普通にできるようになるのではないかと。

学生は他学部と比べると圧倒的に裕福。「実家が病院・診療所」「両親が勤務医」「普通のサラリーマン家庭(でもわりと裕福)」と三層くらいあるような気がするんだが、気のせいだろうか? BMW乗り回している先輩は女食いまくり、だが、それほど珍しい事例でもないと思う。これ言う必要あるのかどうか疑問だけど、医学部の女子は全然モテません!

私感では、医学生、医師を一番誤解しているのは身内や知り合いに該当者がいる人間。大抵本人達は見えないところで血の滲むような努力をしているものだが、外面だけで意外とボロいんじゃん? と思っている。あえて否定はしないが、自分でやってから言ってみような! まあでも実際医学関係者に言ったら殴られると思うんで。

私がボロいなーと思うのは、医師になってからかなあ。何かに憑かれたかのごとく、医師になって突然、車やらAVやら金のかかるオタ趣味にハマる人も多いです。実家の病院で週に四日でつきに100万? 120万だったかな、それくらい払っている医者がいるんですが、診療中、居眠りして看護婦に笑われてるんですよ。そんなアホでも医師免許持ってるから100万とかもらえるわけで(大学病院勤務のヒラなら80万くらいかな……ちょっとデータわかんない)、親父曰く、「あんなんでもいないと困るんだ」この人何で医者なんだろう? 当然の疑問。が、別に金だけで医師になるのも一つの人生だと思う。私の家はフェラーリ原理主義で、壁にフェラーリの旗が貼り付けられ、フェラーリの時計が掲げられ、往年のナチスドイツの雰囲気を感じつつでもこれって普通車を買えない人が使うもんなんじゃねーの? って感じだけど、実際問題医者にでもなってないとフェラーリやポルシェをバカ買いするなんてできないわけで、金が欲しい、だから医師になりたいでも全然いいと思う。問題起こして逃げても医師を欲しがってる病院って(田舎であればあるほど)無数にあるわけで、まともな人間は大きな病院で忙しく働きたいと思っていて供給が全くない状態だと、そういうのを雇うしかないんですよね。

んでも、これは金だけで、名誉のために大学病院で昇進したいと思っても、白い巨塔以上の過酷な世界になるから難しいなあ。受け皿があれば一番なんですが。研修医なんかだと、時給300円以下で働かせる病院もまだあるようですよ。どことは言えませんが。

で、私はここで難しいから、疲れるから厳しいから医師への道をあきらめろ! と言いたいわけでなくて、本当にそれがあなたの将来なりたい道なんですか? ってことです。医学部の六年は(研修期間込みだと八年ですが)本当に厳しいし、辛いし、他の学部のほうがよっぽど楽。彼ら、馬鹿みたいに遊んでいますよ。そういう人達を知れば知るほど無力感に苛まれる。最初の解剖で頭がおかしくなる人もいるし、真冬にホルムアルデヒドに暴露されながら十時、十一時まで大学に残ってやる実習なんて耐えられないですよ。実際私、学校に行くまでお腹壊してましたし、他のメンバーも絶・不調だった。まあ、いい思い出ですが。親の薦めで安易に入学してなぜ私はここにいるのか延々考えて吐きながら試験勉強してる子だって珍しくない。私は実はお金って人生ではそれほど重要なファクターではないんじゃね? と思う。金だけで生きてはいけないし。けど、たとえば配偶者が無職だったりしたときを考えると、これほど強い資格もないなってのも、まあわかります。でも、もし他に好きなことがあって、やりたいことがあったとき、絶対後悔しますから。今気づいたけど、私がメッセージを送りたいのって、たとえば実家が病院で、跡継ぎに考えられている人間なんだ。あのねー、君みたいなのいっぱいいる! でも、自分のやりたいことと親のプレッシャーの間で揺れ動いているの見てると、とてもじゃないけど、そんなに苦しむ必要があるの? と思えるのさ。いい子にならなくたって全然いいんじゃないかなあ。君がいなくても病院つぶれるだけだから、親が勝手にやったことなんだから、それだっていいんだって。それよか自分が幸せになることのほうが大切だ。

それでも医師になりたい、医学部に進みたいと思うのなら、なぜ医師になりたいのか、もう一度考えてみればいいと思う。それは多分、とても重要なことです。