山本 文緒『プラナリア』文春文庫を読んで

ISBN:4167708019

ちょっと共感しにくい話なんだけど、それでも、ああ、と思うものがいくつかあった。そのなかで心に残ったのが「乳ガンは治療してしまってもう元気なんだからってみんな言うけれど、今でも私は副作用のある注射をしていて、ひどいときには目眩がするし、吐き気だってある。私のどこが元気だっていうの?」ってな文章。ちょっと違うかもしれんけど、そんな感じの。

で、私もイベントなんかで「いまはもう元気なんだね」と確認するように言われるたびにそう思う。あのねえ、私が才気活発(多分ここ笑うところ)に見せてるのはなけなしのプライドのためと真実薬のおかげなんですよ。その薬だって副作用はあるし、そもそも健康な人間は毎週血液検査とかしないだろ。じぶんが見ているものが実際にそこにあるのか自分の幻覚なのか霊なのか夢なのかと考える、考えなきゃいけない、狂気に近い瞬間なんて想像もしたことないだろ。悪夢をみるから寝るのが怖いとかわっかんねえだろてめぇ。別にてめえのせいなんかにする気はないから人の見せかけの健康を免罪符にすんな。