ニートを見た

10月02日 18:00から放映されていた『真相報道バンキシャ!サプライズNEWSツアー』にニートの若者を集めて何らかの技能を習得させ、自立への道を計る施設の特集があった。あとで番組表を参照すると、『ニートと合宿100日脱走…遅刻…旅立ちは』とある。確かにこれだった。ちょっと検索してみると、ニートの就業支援「若者自立塾」などが見つかるが、この施設は確か数ヶ月前にニュースサイトなんかで取り上げられていたと思う。教える技能がフィギュア制作やイラスト制作などで、非常にネタ度が高かっ特殊な方面へのアプローチが多く、一種異様だった。

で、実は私はそこで初めてニートと呼ばれる人たちをテレビで観たわけだが、彼らは引きこもり層と重なっているらしい。言われてみれば、教育も受けない、仕事もしないだと遊ぶくらいしかすることがないわけだが、そうか、ニートって引きこもってるのかー。そりゃ私が見たことないわけだよね、家にいるんじゃなー、うん。

漫画家を希望していた男の子がこっそりと自分の描いたイラストを差し出して、「アシスタントになりたかったけど、自分のオリジナリティをなくしたらイヤだから(だからアシスタントを断念?)」とぽつりと言ったのがなんとも印象的だった。「お前はろくな人間になれない」と教師に言われたことを語りだし、それに女性記者が「それは結構キツイですね」と答えると、唐突に彼女に恋人の有無を聞き出すのもいたいけな感じだった。つまり、彼の周りにはそういうことを言ってくれる人間が、彼の力を信じる大人がいなかったということなのだろう。案外そういう大人は多いのだけれど、私はなんだかそれがかわいそうに思える。

ニートはいわゆるモラトリアムを抜けきれなかった人間なのだろう。社会は広く、大きく、そして冷たい。その大海を前にして、人は誰もが孤独を感じ、その大きさに怯える。餅屋の息子が餅屋になった時代は終わり、皆自由に生きる道を探さなければならない。そして、その自分の選択には、誰も責任をとってくれない。つまりそれこそが自立なのだが、その不安に耐えきれないとき、たとえばひとはニートになるんじゃないかと思う。自由に生きなさい、と言われて、その羽ばたいていくべき空の大きさに立ちすくんでいるのが彼らだ。こういうケースは、自分が何を望んでいるか? そのために何をすべきなのか? そういうことにすら無自覚であろうと思う。というか、ま、自覚的であれば、ニートに至らないと思うんだけど。となれば、規則正しい生活の他に、まず自分の深層心理を知らなければいけないわけで、自分探しの旅となると、まあ、三ヶ月合宿やりました! フィギュア作れます! パソコンいじれます! よーし就職するぞ! できました! わあわあバンザーイ! とはいかないんじゃないかなあ。これは、たとえばカウンセリングを何度となく(数十、数百回)重ねていくような、個にとって、非常に根が深い問題に思える。が、こういう合宿に参加させるような家族は即日的な結果を求めているのだろう。人が変わったように働き者で努力家になって帰ってくるというような結果を望んでいるのでは? あのね、これ、そういう問題じゃないですから。まず無理です。

社会的には? というと、実は私はどうでもいい、というか、ニートがたくさんいる背景には、今の豊かな日本社会に、働かなくて、教育も受けない若者を養っていけるという真実があるわけで、それはそれはいーんじゃねーかと思う。その人間個人の健康面で、明らかに精神的によろしくないなあとは思うんですが、政府が乗り出す問題なんですかねえ? そのへんちょっとよくわからねーな。近代の病ではあるだろうなとは思いますが。